「世界で一番幸福な国はどこ?」と聞かれたら、どんな国を思い浮かべますか?
北欧の豊かな自然? それとも温暖な気候の国?
毎年発表される「世界幸福度ランキング」の結果を調べると、経済指標だけでは測れない幸福の形が見えてきました。最新のランキングの結果は、長年首位を維持する国がある一方で、多くの人が「なぜ?」と感じるような国が上位に名を連ねていました。
この記事では、最新の世界幸福度ランキングの結果を紹介するとともに、「なぜあの国が世界一幸福と言われるの?」という疑問についての理由を考察しています。
さらに、今回も注目すべき意外な国に焦点を当て、その背景を探ってみました。気になる日本の順位や、私たちがこのランキングから何を学び、幸福になるために何ができるのかについても考えてみました。
あなたの「幸福」に対する見方が少し変わるかもしれませんので、是非最後までお読みください。
世界幸福度ランキングとは?
「世界幸福度ランキング」は、国連の持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)が発行する「世界幸福度報告書(World Happiness Report)」に基づいています。この報告書は、2012年に初めて発行されて以来、世界中の人々の幸福度を測定する主要な指標の一つとして広く認知されています。
調査の核となるのは、世界中の人々に対して行われる大規模な世論調査「ギャラップ・ワールド・ポール」です。ここでは、各国の住民が自身の生活全体をどのように評価しているかという主観的な幸福度(「人生評価」)が尋ねられます。これは、0(最低の人生)から10(最高の人生)までの尺度で、現在の人生がどの位置にあるかを答える形式です。
この主観的な評価に加え、報告書では人々の幸福度に影響を与えると考えられる以下の6つの客観的な要因も考慮し、分析しています。
- 一人当たりGDP(国内総生産): 国の経済的な豊かさ、生活水準の基盤。
- 社会的支援(Social support): 困ったときに頼れる家族や友人がいるか、社会的なセーフティネットの存在。
- 健康寿命(Healthy life expectancy): 健康な状態で生きられる年数の平均。
- 社会的自由(Freedom to make life choices): 人生において自分で選択し、決定できる自由があるかどうかの度合い。
- 寛容さ(Generosity): 他者への寛大さ、寄付やボランティアなどの利他的行動。
- 腐敗のなさ(Perceptions of corruption): 政府やビジネスにおける腐敗が少ないと感じられる度合い、社会への信頼。
これらの多様な指標を組み合わせることで、世界幸福度ランキングは単なる経済指標では捉えきれない、人々の暮らしの質や社会の健全性といった側面から「幸福」を評価しようとしています。
そのため、その結果は各国の政策立案や社会改善のための重要なヒントが得られるんですね。
最新版!世界幸福度ランキング トップ10
最新の2025年版 世界幸福度ランキングトップ10は以下のような結果となりました。
2025年 世界幸福度ランキング トップ10
- フィンランド
- デンマーク
- アイスランド
- スウェーデン
- オランダ
- コスタリカ
- ノルウェー
- イスラエル
- ルクセンブルク
- メキシコ
この結果を見ると、やはり北欧の国々が上位を占めています。フィンランドはこれで8年連続の1位となり、その幸福度の高さが不動のものであることを示しています。
そして、今回のランキングで特に注目すべきは、イスラエルが8位にランクインしている点です。報道などで伝えられる不安定な情勢を考えると、この順位は多くの人にとって意外に感じられたのではないでしょうか。前年の5位からは順位をやや落としたものの、依然としてトップ10圏内を維持しています。
また、コスタリカやメキシコといった中南米の国がトップ10入りしているのも興味深い点です。
では、これらの国々、特に長年トップを維持しているフィンランドや、今回も意外なランクインを見せたイスラエルは、なぜこれほどまでに幸福度が高いのでしょうか? 次のセクションで、その理由を詳しく探っていきましょう。
なぜあの国が世界一に? - 幸福を構成する6つの要因
長年世界一幸福な国に輝いているフィンランドをはじめとする北欧諸国、そして今回も意外なランクインを見せたイスラエル。これらの国々がなぜ幸福度が高いのか、その秘密は先ほどご紹介した6つの要因に隠されています。それぞれの要因が、どのように人々の幸福に寄与しているのかを整理しました。
1. 一人当たりGDP(経済的な安定と公平な分配)
経済的な豊かさは、生活の安定や質の向上に直結するため、幸福度の一因となります。上位国は概して一人当たりGDPが高い傾向にありますが、重要なのはその富が国民に公平に分配され、充実した福祉制度に繋がっていることです。
フィンランドなどの北欧諸国は、高い税負担と引き換えに、
- 手厚い医療
- 教育
- 育児支援
- 失業給付など
社会保障制度が整備されています。これにより、人々は経済的な不安を感じにくく、安心して暮らすことができます。
2. 社会的支援(強い社会的繋がりとセーフティネット)
困ったときに家族や友人、あるいは社会から助けを得られるという安心感は、幸福度において非常に重要な要素です。
北欧諸国では、国家レベルでの手厚い社会保障に加え、地域コミュニティや職場での相互支援の意識も高いと言われています。人々は孤立することなく、強い社会的繋がりの中で生活しています。
3. 健康寿命(長く健康で活動的な生活)
健康であることは、人生の質を高め、幸福感に大きく影響します。質の高い医療サービスに誰もがアクセスできる環境や、健康的なライフスタイルへの意識の高さが、健康寿命の長さに繋がります。
上位国は総じて健康寿命が長く、人々は活動的で充実した人生を送る傾向にあります。
4. 社会的自由(人生の選択肢と自己決定権)
自分の価値観に基づいて人生の選択ができるという感覚は、個人の尊厳や自己肯定感を高め、幸福に繋がります。
政治的な自由や表現の自由が保障されていることはもちろん、働き方やライフスタイル、キャリアパスなど、多様な生き方が認められている社会は、人々の自由度を高めます。北欧諸国は、個人の権利や多様性を尊重する文化が強く、柔軟な働き方やライフスタイルを選択しやすい環境があります。
5. 寛容さ(他者への優しさと信頼)
見知らぬ他者への寛容さや、困っている人への支援といった利他的な行動は、社会全体の信頼感を醸成し、結果としてそこに暮らす人々の幸福度を高めます。互いに対する信頼が高い社会では、人々は安心して他者と関わることができ、社会全体にポジティブな雰囲気が生まれます。
上位国では、一般的に社会的な信頼度が高く、人々が互いに助け合うことに前向きな文化があります。
6. 腐敗のなさ(公正な社会システムへの信頼)
政府やビジネスにおける腐敗が少ないと感じられることは、社会の公正さや透明性に直結し、人々の安心感や幸福度を高めます。汚職が少なく信頼できるシステムのもとでは、人々は将来への希望を持ちやすく、社会に対して肯定的な見方をすることができます。
北欧諸国は、世界的に見ても腐敗が非常に少ないことで知られており、これが高い社会への信頼に繋がっています。
これらの要因を総合的に見ると、世界幸福度ランキングの上位国は、単に経済的に豊かなだけでなく、人々の間の強い繋がり、手厚い社会的支援、個人の自由の尊重、そして社会への信頼といった、非経済的な要素が非常に充実していることがわかります。これらの要素が相互に作用し、人々の高い幸福感を支えていると言えるでしょう。
意外な国のランクイン? イスラエルが8位になった背景
今回の世界幸福度ランキングでも、イスラエルが8位という高い順位にランクインしていることは、多くの人にとって意外だと感じられたかもしれません。
前年の5位からはやや後退したものの、依然としてトップ10圏内を維持しているその背景には、イスラエル社会のいくつかの特徴が考えられます。
強いコミュニティ意識と社会的支援
まず、イスラエル社会の根底にある強いコミュニティ意識と社会的支援が挙げられます。歴史的な背景から、人々は互いに頼り合い、支え合うことの重要性を強く認識しています。家族や友人、そして地域社会の絆が非常に強く、困ったときには助け合う文化が根付いています。
この強固な社会的支援のネットワークが、個人的な困難や社会的な不安定さに対する緩衝材として機能し、人々の安心感を下支えしていると考えられます。
多様性とダイナミズム
次に、イスラエル社会は多様性とダイナミズムに満ちています。世界中から様々な背景を持つ人々が集まり、異なる文化や価値観が共存しています。この多様性が、新しいアイデアやイノベーションを生み出し、社会全体に活気を与えている側面があります。
「スタートアップ・ネイション」と呼ばれるテクノロジー分野の発展も著しく、経済的な活力や将来への希望が、人々の幸福感に寄与していると考えられます。
強いナショナル・アイデンティティと目的意識
イスラエルには強いナショナル・アイデンティティと目的意識があります。国家の存続や安全保障といった課題に直面しているからこそ、国民の間には強い一体感や、国や社会に貢献しようという意識が生まれやすいのかもしれません。
困難な状況下でも、共通の目標に向かって努力すること自体が、人々の生きがいや幸福感に繋がることもあります。
このように、意外な国のランクインは、「幸福」が表面的な情報や一般的なイメージだけでなく、その国の社会構造や文化、人々の繋がり、そして困難への向き合い方といった多様な側面を見る必要があることを改めて教えてくれます。イスラエルの例は、逆境の中でも人々の絆が幸福を支える力となりうることを示唆していると言えるでしょう。
日本の順位- なぜ日本は上位に入らないのか
では日本は世界幸福度ランキングでどのあたりに位置しているのでしょうか。
経済大国であり、治安も良く、国民皆保険制度によって医療へのアクセスも確保され、健康寿命も世界トップクラスの日本ですが、残念ながら幸福度は、欧米諸国などと比べて常に相対的に低い順位に留まっています。
最新の2025年版 世界幸福度報告書によると、日本は147カ国・地域中55位でした。これは、前年の2024年版(51位)から順位を4つ落とす結果となりました。G7諸国の中では最下位となっています。
この順位を見て、意外だと感じる方もいるかもしれません。なぜ、経済的に豊かで健康寿命も長い日本が、幸福度においては上位に入らないのでしょうか?
再び6つの要因を日本の状況に当てはめてみました。
一人当たりGDPと健康寿命:日本の強みだが、それだけでは不十分
一人当たりGDPは高く、経済的な基盤はしっかりしています。また、医療制度も整備されており、世界でも有数の健康寿命を誇ります。これらの点は、日本の幸福度を支える重要な要素であり、客観的な豊かさは間違いなく存在します。
しかし、幸福度は経済力や健康寿命だけで決まるものではありません。
社会的支援:深刻な課題「社会的孤立」
世界幸福度報告書が特に日本の大きな課題として繰り返し指摘しているのが、社会的支援の弱さ、すなわち「社会的孤立」です。
報告書では、「困ったときに頼れる友人や親戚がいるか」といった質問への回答や、他の人と食事を共有する頻度などが指標の一つとされています。2025年版の報告書でも、「先週の昼食や夕食のうち、何回を他の人と食べましたか?」という質問に対し、日本は調査対象国の中で極めて低いスコアでした。
核家族化や都市化の進展、非正規雇用の増加、地域コミュニティの衰退などが、人々の間の繋がりを弱め、社会的孤立感を深めていると考えられます。
社会的自由:同調圧力と息苦しさ?
日本社会には、周囲との調和や同調を重んじる文化が根強くあります。これは社会の秩序を保つ側面がある一方で、「人と違うこと」への抵抗感や、自分の意見を率直に言いづらい雰囲気、特定の生き方や価値観への無言の圧力といった形で、個人の社会的自由を制限していると感じられることがあります。
柔軟性に欠ける働き方や、キャリアパスの選択肢の少なさも、自由度を低く感じさせる要因かもしれません。
寛容さ:内向き志向と他者への無関心?
日本社会は礼儀正しく秩序が保たれていますが、同時に他者への関心が薄い、あるいは深入りを避ける傾向があるという見方もあります。特に見知らぬ人や異なる背景を持つ人々に対する寛容さの面で、課題が指摘されることがあります。
ボランティア活動や寄付といった利他的な行動への参加率も、上位国に比べて低い傾向が見られます。
腐敗のなさ:不信感が拭えない?
政治やビジネスにおける不祥事や、意思決定プロセスの不透明さは、社会への信頼感を損ないます。日本は国際的に見れば腐敗が少ない国とされていますが、国民の間には政治や行政、大企業に対する不信感が少なからず存在し、これが社会全体の幸福度に影を落としている可能性があります。
これらの点から、日本が経済力や健康寿命といった客観的な豊かさがあるにも関わらず、世界幸福度ランキングで上位に入れない理由が見えてきます。特に、
- 社会的支援の弱さ(社会的孤立)
- 社会的自由の制約、
- 社会への信頼
といった、人々の主観的な幸福に深く関わる非経済的な要因において、課題を抱えていると言えるでしょう。
ランキングから学ぶ - 幸福になるためのヒント
以上のような結果から、幸福を感じるためには以下のような取り組みが必要と言えます。
- 意識的に人との繋がりを築く:
家族や友人との時間を大切にするのはもちろん、地域のイベントに参加したり、趣味のサークルに入ったり、オンラインコミュニティに参加したりするなど、新しい人との繋がりを積極的に持つように努める。職場以外での人間関係を築くことも重要です。
- 困ったときは助けを求め、困っている人には手を差し伸べる
一人で抱え込まず、信頼できる人に相談する勇気を持つ。そして、周囲で困っている人がいれば、小さなことでも良いので声をかけたり、手伝ったりする寛容さを持つ。助け合いの経験は、社会的支援の実感と信頼感を高めます。
- 自分自身の「幸福」の形を考える
社会的な期待や他者との比較ではなく、自分が本当に大切にしたい価値観や、何をしているときに幸福を感じるのかを内省し、それを追求するための自由な選択を意識する。
- 心身の健康を大切にする
健康的な習慣を心がけることは、幸福な生活の基盤です。休息をしっかり取り、適度な運動をし、心身の不調を感じたら専門家に相談することをためらわない。
- 社会に関心を持ち、ポジティブに関わる
自分が暮らす社会の良い点を見つけ、感謝する。同時に、課題に対して無関心でいるのではなく、改善のためにできることを考える。小さなボランティアや寄付、あるいは地域活動への参加など、社会との繋がりを持つことは、幸福感を高めます。
また、社会全体として取り組むべき課題も見えてきます。
- 社会的孤立を防ぐための政策
地域コミュニティを活性化させる取り組みや、誰もが気軽に相談できる窓口の設置、多様な人々が交流できる場の提供など、社会的支援を強化するための具体的な施策を進める必要があります。
- 多様な生き方、働き方を認める
画一的な価値観を押し付けず、多様な働き方やライフスタイル、キャリアパスを選択できる社会的自由を保障する。長時間労働の是正や柔軟な勤務形態の導入など、働く環境の改善も含まれます。
- 社会への信頼回復
政治や行政、企業における透明性と説明責任を高め、腐敗をなくす取り組みを徹底することで、国民がシステムに対して信頼を寄せられるようにする必要があります。
まとめ
この記事では、「意外な国がランクイン?世界一幸福な国ランキングとその理由」というテーマで、最新の2025年版 世界幸福度ランキングの結果と、その背景にある理由を深掘りしてきました。長年トップを維持するフィンランドをはじめとする北欧諸国の強さ、そして意外な国イスラエルのランクインに見る社会の特性、そして日本の現状と課題について考察しました。
世界幸福度ランキングは、一人当たりGDP、社会的支援、健康寿命、社会的自由、寛容さ、腐敗のなさといった多様な要因から、各国の幸福度を測る試みです。このランキングから明らかになったのは、経済的な豊かさだけでなく、人々の間の繋がりや信頼、そして自分で人生を選択できる自由といった非経済的な要素が、人々の幸福に深く関わっているということです。
特に、意外な国イスラエルのランクインは、困難な状況下でも、人々の強い絆や目的意識が、幸福度を下支えすることもあるということを示しています。そして、日本の55位という順位と、その背景にある「社会的孤立」の課題は、私たち一人ひとりが人との繋がりをいかに大切にするべきかを強く示唆しています。
幸福の形は多様であり、それは決して孤立した状態ではなく、人との繋がりや社会との関わりの中にこそ見出されることが多いのかもしれません。