愛好家が選ぶ世界一美しい図書館5選

構造物

本が好き、美しい建築が好き、静謐な空間が好き。そんなあなたへ贈る世界のとっておきの場所。それは、単なる本の保管場所ではなく、知性と芸術、そして歴史が息づく美しい図書館です。

ページをめくる音だけが響く静かな空間に足を踏み入れると、高く積み上げられた書架、荘厳な天井画、繊細な装飾に思わず息をのむ… そんな経験はありませんか? 図書館は、私たちに知識を与えてくれるだけでなく、その空間自体が持つ力で、訪れる人々を魅了し続けてきました。

この記事では、世界中の図書館を巡り歩いた(あるいは夢見る)愛好家たちが、世界一美しいと称賛する図書館を5つ厳選してご紹介します。なぜこれらの図書館がそれほどまでに人々を引きつけるのか、その歴史や建築、蔵書、そして独特の雰囲気まで、その魅力をたっぷりと紹介してみます。

なぜ人々は美しい図書館に魅了されるのか?

図書館、特に「美しい」と形容される場所には、特別な引力があります。それは一体なぜなのでしょうか?

以下の3つの要素から解説してみました。

  1. 知性と歴史の象徴: 図書館は、古今東西の知識が集積された場所。高く積み上げられた本棚は、人類の叡智の象徴であり、私たちに知的な興奮と畏敬の念を抱かせます。特に歴史ある図書館は、その建物自体が長い年月を経てきた証人であり、過去の偉人たちが触れたかもしれない空間に身を置くことで、時代を超えた繋がりを感じさせてくれます。
  2. 圧巻の建築美と芸術性: 美しい図書館の多くは、当代一流の建築家や芸術家によって手がけられました。壮麗なバロック様式、厳かなゴシック様式、洗練されたモダンデザインなど、その建築様式は様々ですが、共通しているのは空間全体が芸術作品として設計されている点です。天井画、彫刻、ステンドグラス、書架のデザインに至るまで、細部にわたるこだわりが、訪れる者を圧倒し、感動を与えます。
  3. 日常からの逃避と静謐な時間: 日々の喧騒から離れ、静かで落ち着いた時間を過ごせるのも図書館の魅力です。美しい空間に身を置くと、自然と心が穏やかになり、読書や思索に集中できます。まるで別世界に迷い込んだかのような感覚は、最高の贅沢と言えるでしょう。

これらの要素が複合的に絡み合い、美しい図書館は私たちにとって単なる施設以上の、特別な意味を持つ場所となるのです。

世界一美しい図書館5選【愛好家が厳選】

それでは、いよいよ愛好家たちが心を奪われた世界で最も美しいと称される図書館を5つご紹介します。それぞれの個性が光る、珠玉のライブラリーをご覧ください。

1. ストラホフ修道院図書館(チェコ・プラハ):天井画が圧巻のバロック様式

プラハ城近くの丘の上に建つストラホフ修道院。その中にある図書館は、息をのむような美しさで世界中の人々を魅了しています。特に有名なのが「神学の間」と「哲学の間」と呼ばれる2つのホールです。

  • 神学の間 (Theological Hall):17世紀後半に建てられた、初期バロック様式のホール。天井一面に描かれたフレスコ画は、知識や真理の探求をテーマとしており、見る者を圧倒します。壁面には、くるみの木で作られた精巧な書架が並び、神学に関する貴重な書物が収められています。中央に並ぶ様々な時代の地球儀や天球儀も、当時の知的好奇心の高さを物語っています。
  • 哲学の間 (Philosophical Hall): 18世紀末、啓蒙思想の高まりとともに増築されたホール。天井までの高さは約14メートルもあり、開放感に満ちています。「神学の間」とは対照的に古典主義様式が取り入れられ、より壮大で知的な雰囲気。こちらも天井には、人類の精神史を描いた壮大なフレスコ画「人類の知的進歩」が描かれており、そのスケールと美しさに言葉を失います。

この図書館は、中世から続く修道院の長い歴史と、バロック芸術の精華が見事に融合した空間です。プラハを訪れた際には、必ず立ち寄りたい場所の一つと言えるでしょう。

残念ながら通常、ホール内への立ち入りは制限されていますが、入口からその荘厳な雰囲気を十分に味わうことができます。

2. オーストリア国立図書館 プルンクザール(オーストリア・ウィーン):皇帝の威光を示す豪華絢爛さ

音楽の都ウィーンの中心部、ホーフブルク宮殿内にあるオーストリア国立図書館。その心臓部とも言えるのが「プルンクザール(豪華なホール)」です。ここは、かつてハプスブルク家の宮廷図書館として利用されていた場所で、その名の通り、贅を尽くした装飾が施されています。

18世紀、皇帝カール6世の命によって建てられたこのホールは、ヨーロッパ・バロック様式建築の傑作と称えられています。全長約80メートル、高さ約20メートルにも及ぶ巨大な空間は、まさに圧巻の一言。

  • 中央ドームのフレスコ画: ホールの中心にある巨大なドーム天井には、宮廷画家ダニエル・グランによる壮大なフレスコ画が描かれています。皇帝カール6世の神格化や、戦争と平和、天国と地獄などがテーマとなっており、バロック芸術の頂点とも言える迫力です。
  • 豪華な装飾: 壁面を埋め尽くすのは、くるみ材で作られた磨き上げられた書架と、そこに収められた約20万冊もの貴重な古書。ホール内には大理石の柱や、皇帝やハプスブルク家の人々を模した彫像が立ち並び、帝国の威光を今に伝えています。
  • ヴェネツィア製の地球儀: ホールの中央付近には、直径1メートルを超える巨大な地球儀が4つ置かれており、これも見どころの一つです。

プルンクザールは、単なる図書館ではなく、ハプスブルク帝国の栄華と権力を示すための壮大な舞台装置でもありました。

一歩足を踏み入れれば、まるで皇帝たちが生きた時代にタイムスリップしたかのような、荘厳で華やかな雰囲気に包まれるでしょう。

3. トリニティ・カレッジ図書館「ロング・ルーム」(アイルランド・ダブリン):『スター・ウォーズ』のモデル?荘厳な知の回廊

アイルランド最古にして最高の学府、ダブリン大学トリニティ・カレッジ。その旧図書館にある「ロング・ルーム」は、世界で最も印象的な図書館空間の一つとして知られています。

18世紀初頭に建設されたこの図書館は、全長約65メートルにも及ぶ長いホールが特徴です。

  • アーチ型の天井と高い書架: なんと言っても目を引くのは、高く美しいアーチを描くオーク材の樽型天井。そして、その下に両側の壁一面にそびえ立つ、天井まで届くかのような書架群です。そこには約20万冊もの古書が整然と並べられており、まさに「知の回廊」と呼ぶにふさわしい光景が広がっています。
  • 賢人たちの胸像: ホールの両脇には、プラトンやアリストテレスといった古代の哲学者から、シェイクスピア、ニュートン、そして大学ゆかりの人物まで、数多くの偉人たちの白い大理石製胸像がずらりと並び、厳かな雰囲気を醸し出しています。
  • 『スター・ウォーズ』との関連?: このロング・ルームの光景は、映画『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』に登場するジェダイ・アーカイブによく似ていると指摘されており、ファンの間でも話題になりました。(ただし、制作側は関連性を否定しています。)
  • ケルズの書(Book of Kells): ロング・ルームと同じ建物内には、アイルランドの国宝であり、世界で最も美しい本の一つと称される「ケルズの書」(8世紀頃制作の福音書)が展示されています(ロング・ルームとは別料金・別展示)。こちらも必見です。

木の温もりと古書の香りに満ちたロング・ルームは、訪れる者に深い感銘と知的な刺激を与えてくれる特別な場所です。

4. ジョアニナ図書館(ポルトガル・コインブラ):金泥細工とコウモリが守る美

ポルトガル中部に位置する古都コインブラ。ヨーロッパで最も古い大学の一つであるコインブラ大学の丘の上に、まるで宝石箱のような美しい図書館「ジョアニナ図書館」があります。

18世紀初頭、ポルトガル王ジョアン5世の命によって建設されたこの図書館は、豪華絢爛なバロック様式で知られています。

  • 金泥細工(タッリャ・ドゥラーダ): 図書館内部を彩るのは、ポルトガル特有の金泥細工(タルハ・ドウラーダ)と呼ばれる、木彫りに金箔を施した豪華な装飾です。書架や天井、柱などが、きらびやかな金色で埋め尽くされています。特に、異国情緒あふれる中国風のモチーフ(シノワズリ)が取り入れられているのが特徴的で、当時のポルトガルの海洋大国としての繁栄を偲ばせます。
  • 3つの部屋: 図書館は、それぞれ異なるテーマカラー(金色、赤色、緑色)を持つ3つの部屋で構成されており、それぞれに美しい天井画が描かれています。部屋を移動するごとに、異なる趣を楽しむことができます。
  • 貴重な蔵書: ここには、16世紀から18世紀にかけての法律、神学、哲学に関する貴重な書籍が約6万冊収蔵されています。
  • 本の守り神?コウモリ: ジョアニナ図書館には、非常にユニークな特徴があります。それは、夜になるとどこからともなく現れるコウモリたちが、本を傷つける害虫(シミなど)を食べてくれるという点です。そのため、殺虫剤を使う必要がなく、貴重な蔵書が守られていると言われています。夕方になると、貴重な家具をコウモリの糞から守るために革製のカバーがかけられるそうです。

エキゾチックで、少しミステリアスな雰囲気も漂うジョアニナ図書館。金色の輝きと、本を守るコウモリの存在が、この図書館を唯一無二の存在にしています。

5. アドモント修道院図書館(オーストリア・アドモント):白亜の輝きと7万冊の蔵書

オーストリア中部、アルプス山脈の麓にあるアドモント修道院。ここには、世界最大の修道院図書館があり、そのあまりの美しさから「世界の第八不思議」と称されることもあります。

1776年に完成したこの図書館は、後期バロック(ロココ)様式の傑作です。

  • 白と金の輝き: 図書館内部は、白を基調とした壁や天井に、金色の繊細な装飾が施され、非常に明るく軽やかな印象を与えます。大きな窓から差し込む自然光が、その輝きを一層引き立てています。まるで天国のような美しさ、と表現されるのも納得です。
  • 7つの天井画: 天井には、バルトロメオ・アルトモンテによって描かれた7つの美しいフレスコ画があります。これらは、啓示、知恵、科学、芸術といった、人間の知識の段階を象徴的に描いており、啓蒙時代の精神を反映しています。
  • 隠し扉と彫刻: 図書館内には、彫刻家ヨーゼフ・シュタメルによる見事な木彫りの彫刻(特に「死」「最後の審判」「天国」「地獄」を表す四終の彫刻が有名)が配置されています。また、書架の一部が隠し扉になっているなど、遊び心のある仕掛けも見られます。
  • 膨大な蔵書: 約7万冊もの貴重な書籍が収蔵されており、中には非常に古い写本やインキュナブラ(初期刊本)も含まれています。

アドモント修道院図書館は、その圧倒的なスケールと、光に満ちた優美な空間で、訪れる者を別世界へと誘います。宗教的な荘厳さと、啓蒙思想の明るさが融合した、まさに「天国的な」図書館と言えるでしょう。

美しい図書館を訪れる際のポイント・マナー

これらの素晴らしい図書館を訪れる際には、いくつか心に留めておきたい点があります。

  • 静粛に: 図書館は静かに過ごす場所です。大きな声での会話は控えましょう。
  • 写真撮影のルールを確認: 美しい空間を写真に収めたい気持ちは分かりますが、撮影が禁止されている場合や、フラッシュ禁止、有料などのルールがあることが多いです。必ず事前に確認し、ルールを守りましょう。
  • 飲食物の持ち込み: 基本的に禁止されている場合が多いです。
  • 服装: 特に修道院など宗教施設内にある場合は、過度な露出は避け、節度ある服装を心がけましょう。
  • 開館時間・見学ツアー: 事前に公式サイトなどで開館時間や、ガイドツアーの有無・予約の必要性を確認しておくことをお勧めします。古い図書館では、保存のために入場制限がある場合もあります。

これらのマナーを守り、貴重な文化遺産である図書館に敬意を払いながら、素晴らしい空間を堪能しましょう。

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